敗者たちの季節 あさのあつこ

あさのさんの作品に限らず、主な登場人物が10代の作品を久しぶりに読んだような気がします。

敗者たちの季節

敗者たちの季節

題名にひかれて手に取りました。
甲子園に出場が決まっていたのに、部員の不祥事で辞退することになった高校と、繰り上げで出場が決まった高校。
章ごとに、レギュラー、家族や取材する人、監督、と様々な立場の人に視点が変わっていく作品です。
快進撃がどうの、とかっていう筋書きではないのに、それぞれの心情や事情が絡められていて、読み応えがありました。

敗者の気持ちの整理のつけ方って本当に難しいよな、って思います。

自分の話になっちゃうんですけど、私、いまだに、後輩の子と組んだ最後の大会で入賞出来なかった、賞をとらせてあげられなかったことを、どこかで引きずってるんですよねー。

これは、うじうじと、とか、うつうつと、とかっていう長期間の物とはまた違って、それこそ、お風呂に入っている時なんかに、不意に思い出して息が詰まりそうになる、みたいな、そんな感じなんですけど。

ということで、作品に話を戻しますが、甲子園を見ていると確かに、エラーをしてしまった選手がいたり、打たれた選手がいたりして、そういう選手は、というか、そういう高校生の子は、一体どうやって気持ちの整理をつけるんだろう、って思うんですよね。

あれほどの舞台で、あれほどの思い入れがあって、そこでミスをしてしまう、負けてしまう。
特に、野球はチーム競技だから、明確で大きなミスがあると、余計、独特の辛さがあるだろうと思います。
高校生しか出られない大会では、後に挽回することが叶わない場合が多い、というのを含めて。

でも、それを若い時に経験した後、自分の中でどう整理して、消化していくか、って、多分、きちんと向き合えば、物凄く大きな糧にもなる気がします。
どうなんだろうなあ、きっと、そんなに簡単なものではないんでしょうね。
真剣に取り組んでいればいるほどに。

本人だけでなく、チームメイトのミスで負けた、という事をどう消化するか、ということに関してもそうだし。
御両親とか、友達とか、親戚とか、それぞれに思うことがあるんでしょうね。
声のかけかたとか諸々、凄く考えるんだろうな、と思うと、結果がハッキリと出る勝負事っていうのは、やっぱりプラスもマイナスも、大きなうねりを起こすんだなあ、と思います。だからこその魅力なんでしょうね。

なんだか、何事も真剣に取り組もう、楽しもう、という気持ちになりました。
結果を恐れすぎず、傷つくことを恐れすぎず。
何事も、自分で消化していくしかないんだろうな、って。

読めて良かったです!