かんかん橋を渡ったら あさのあつこ

久しぶりにあさのさんの作品を読みました。
良かったです。
あさのさん、こういう系統も良いんだなあ、って思いました。
あさのさんの作品は本当に、人間を書きたいんだな、って伝わってくるんですよね。
その登場人物の心情を書きたい、捉えたい、という強い思いが伝わってくる。
そこが好きです。惹きこまれたい、と思うし、実際、惹きこまれる。

この連作短編集、決して、明るい話ばかりではない・・・、というか、寂れた温泉町の、苦しい状況の中の話が多いんですけど、方言のあたたかさや、苦しさの中で生きていこうとする人々の感覚、息遣いまでが伝わってくるようで、一章、あるいは二章ずつ、数日かけて、じっくりと読みました。
あさのさんの文体が好きなんですよね、この濃さが。昔から読んでるからでもあるんでしょうけど。
ホッとする気持ち、怒る気持ち、あたたかさに触れたときにほどける感情、揺らぐ心、そういうものの書き方が好きです。

それぞれの人にそれぞれの生き方と事情と感情があって、生きることはどうしたって生々しくなるんだなあ、って、改めて感じました。
読めて良かったです。