花や咲く咲く あさのあつこ

これも確か2月に読みました。

花や咲く咲く

花や咲く咲く

太平洋戦争末期の仲の良い女学生4人が、部屋の片隅で、それぞれに似合うブラウスを、隠れて懸命に縫うところから始まる話です。
戦時中であろうが、綺麗なものを見たい、作りたい、着たい、という欲求は、そりゃああったよな、という切なさが凄く伝わってきました。

普通の女の子たちが、生き生きと明るさを忘れないように生活している中で、運よく手に入った美しい布で頑張って縫い上げた服を、家の中で着て見せ合う。そんな楽しみ、夢や憧れが描かれているからこそ、その分、外には着て行けないという辛さもくっきりとしていきます。

本当に、特に若い子達はきっと、やりたいこと、好きなことが沢山あったはずなんですよね。夢なんて大きなものじゃなくても、綺麗な服を着たい、とか、甘いものを食べたい、とか、そんなちょっとした望みが沢山、あったはずで、でも、それが時代的に許されなかった。

それを思うと、やっぱり、それこそ一度しかない自分の人生、自分の時間が、制限されて、強制される、っていうのは、どれだけ辛い事だったんだろうと思います。

今の自分の幸せを改めて感じつつ、本当に、先の世代の為にも、小さな望みを自分で叶えることが出来る、という環境が、出来るだけ長く続いていきますように、と思います。

特攻や空襲や疎開、といったことがメインではなく、女の子たちの日常がメインで描かれているからこそ、より今の自分達に引きつけて読むことが出来る作品だと思います。読めて良かったです。