絶叫城殺人事件 有栖川有栖

2月終わりに読んだ本です。
最近読んだものから書こうかとも思ったのですが、ややこしくなってしまいそうなので、もう読んだ順で感想を書きたいと思います(笑)

絶叫城殺人事件

絶叫城殺人事件

凄く面白かったです。
私は、ただただ人がとりあえず死に、トリックだけで押してこられる、というミステリには興味が持てないので、有栖川さんの作品はとてもありがたいです。

黒鳥亭、壷中庵、月宮殿、雪華楼、紅雨荘、絶叫城の6つの館を舞台にして起こる事件。
建物好きとしては、館物ミステリって物凄く惹きつけられるので、そういう意味でも、この短編集は凄く好きでした。

ミステリの様式美。
このジャンルには、現実では難しい、きちんと説明がつく解決がなされることへの安心感のようなものがあります。
それから、単純に、不思議なことを「どうして?」と思うことが出来て、それについて考えることが出来て、読み進めれば答えを与えてもらえる。こういう表現が当てはまるのか分かりませんが、贅沢だな、と思います。

そうそう、「それに加えて結末が意味不明で思わせぶりだから、利口ぶって深読みする楽しみがあるかもしれない」っていう文章があって、この表現が凄く好きでした。まさに、そうなんですよね。「利口ぶって深読みする楽しみ」でしかない。それを忘れないでいたいです。

私、そういう「利口ぶって深読みする楽しみ」方って、あんまり好きじゃないんですよねー。気を抜くとすぐそうしてしまいそうで嫌なので、出来るだけ気を付けるようにしています。
何に関しても利口ぶりたくないし、誰かに対して、何かに対しても、自分が勝手に深読みしているだけだ、という自覚を忘れないようにしたい。
自分が正しい、自分の捉え方が正しい、と思いたくない。

そういう楽しみ方もアリなんだろうと思いつつ。

有栖川さんの作品は、文章自体も好きなので、そういう意味でも読みやすくて嬉しいです。