夜の蝉 北村薫
円紫さんシリーズ二作目を読みました。
- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1996/02/17
- メディア: 文庫
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二作目も、とっっても面白かったです。
一つ目、「朧夜の底」は、本屋という身近なところで起きたことが題材になっているからか、人間の心根の怖さ、のようなものが強く迫ってきました。
「朧夜の 底を行くなり 雁の声」というとりあげられる歌自体も、とても好きになったのですが、この歌から受ける「大きい」という印象と、この話自体の底しれなさ、人の心根は想像よりもずっとずっと捕えがたく、朧夜のように霞んでいる、というようなことが、上手くリンクしているように感じました。北村さんは凄い。
二つ目、「六月の花嫁」こちらは、とても可愛らしくもあって、心温まる作品でした。
久しぶりに、一部ですけど、答えを読む前に分かることがあって、それも嬉しかったです。
円紫さんと主人公との会話のやりとりも、和やかで、読んでいてとても楽しかった。
歌も色々と出てきて、それも、楽しく読みました。
三つ目、「夜の蝉」これは、扉の「−時の流れに」が効いているな、扉の一文、ってこんなに奥深く使われることがあるんだな、って初めて思いました。
主人公の私と姉の間に流れた、20年程の時の流れ。それが、凄く響いてくる。
姉の心境の変化、そして、主人公の姉への想いの変化。
それはまさに、時の流れと共にあり、これからも、時の流れと共にある。
私は一人っ子なので、姉妹の関係性の奥深さに少し触れさせてもらったような気持ちになって、そういう意味でも、とても面白かったです。
読めて良かった、としみじみと思える短編集でした。
ミステリなのに、人の心のことが書かれている。
私はきっと、そういう作品が好きなんだろうなあ、と思います。