和菓子のアン 坂木司

数日前に読み終わりました。

和菓子のアン (光文社文庫)

和菓子のアン (光文社文庫)

良い作品でした!
和菓子をもっと知りたい、見てみたい、味わってみたい、愛おしみたい、と思えるお話ばかりで。

主人公の18歳の女の子は、デパートの地下街の和菓子店で働き始めます。
店長も一緒に働く人達もとっても個性的。
登場人物のはっきりとした個性と、それぞれの和菓子の意味や名前の由来から解決出来る謎解きの上手さとが、凄く良いバランスで噛み合っている作品でした。

縁起物としての和菓子、何かを指し示すことが出来る和菓子、沢山の意味が込められた和菓子。
七夕といっても、星空だけじゃない、橋を架けに行くカササギをモチーフにすることもある。
とっても自由で洒落っ気があって、凄く面白いんですね、和菓子って。
こういう、知らなかった楽しみを教えてもらえることが、読書の嬉しいところだなと思います。

そして、楽しいだけでない、「松風」に込められた切ない意味。これを絡めたお話も、静かで深い思いが伝わってきて、凄く印象的でした。

おはぎに沢山の名前があることも、知りませんでした。搗き知らず→月知らず→北窓、とか、よく連想できるなあ、こういう言葉遊び、好きなんだよなあ、って、とっても楽しかったです。
和菓子は俳句と似てる、っていう言葉が出てくるんですけど、まさにそうだな、と思います。
俳句は、短い言葉から無限の広がりを感じることが出来る。
知識が無くても言葉の綺麗さは伝わる、知識があればもっと楽しさが広がる。和菓子もそう。っていうくだりが、この作品の軸をよく表しているなと感じました。

「嵯峨野」は季節的に丁度今だよなあ。源氏物語六条御息所の女の業とススキが風にざわめく音を重ねる、っていうのも、凄く好きな連想、解釈でした。
和菓子からこうやって思いを馳せていけたら、とっても豊かなんだろうな。
今度、和菓子屋さんに探しに行ってみたいです。

和菓子ってそもそも、見た目も美しかったり、可愛らしかったりしますもんね。今後は偶に買ってゆっくり味わいたいな、って思います。
ここ数日でも、二回、久しぶりに和菓子を買いました。やっぱり美味しいですね、和菓子も。

お仕事小説を書く方として有名(多分)な坂木さんらしく、デパ地下でのお仕事小説としても、とっても面白かったですし、あたたかいエピソードも多くて、読んで良かったなあ、ってしみじみと感じました。
また、坂木さんの他の作品も読みたいです。