再び

ここ数日は、以前、触れたものにもう一度触れる機会が二度ありました。

一つは本で、「金色の野辺に唄う」です。秋だな、と思ったら読みたくなって。
読むたびに、違う人の感情が胸に迫ってくるような気がします。
今回は、自分の中にあるものに目を向けないといけない時期だからか、奈緒子さんの気持ちが凄く沁みました。
そう簡単には満たされない、求めても求めても埋まらない、抱えて足掻いていくしかない。
まだ痛い、まだ痛い、と思いながら、生き抜けばいつか凪いでいくんじゃないか、と生きていってみるしかない。
奈緒子さんのように美しくはないので、共感とはまた違うんですけど(笑)、何だか、奈緒子さんの章が特に、沁みました。

そして、秋はやっぱり良い季節だな、って読みながら改めて感じました。色が美しい。

それから、映画。
映画のほうは、先週、母が、見て良かったって思う映画の話になったときに私がちらっと話した「ホテル・ルワンダ」を借りてきていて、一緒に見ることにしました。見たのは数年ぶりだったんですけど、やっぱり惹きこまれました。
主人公の男性と奥さんがほんっとに!演技が上手いんですよね。

1994年、アフリカのルワンダでは、長年続いていた民族間の争いが大虐殺に発展し、100日で100万もの罪なき人々が惨殺された。世界中が黙殺したこの悲劇の中で、ひとりのホテルマンが、殺される運命にあった1200人の命を救っていた・・・。「アフリカのシンドラー」と呼ばれたこの実在の人物は、ルワンダの高級ホテルの支配人を勤めていたポール・ルセサバギナ。行き場のない人々をホテルにかくまい、ホテルマンとして培った話術と機転を頼りに、その命をたったひとりで守り抜いた。

っていうのが、紹介されているあらすじです。
たった20年前にこんなことがあった、そして、国連最大の汚点、と言われてるみたいなんですけど、国際社会は止められなかった。
その中で、こういう人がいた、ということにまず、衝撃を受けます。
ポールさんは、普通の人として描かれてるんですよね。物凄く正義感が強い、とか、物凄く潔癖、とか、そういうふうには描かれていない。
ただ、家族を大事に思い、支配人として有能で、仕事が出来る。
そういう人が、ギリギリのところで、金を使い、頭を使い、なんとか生き延び、匿った人々も生き延びさせる。
ポールさんの、沢山の死体を見てしまってホテルに戻ってからの、動揺して上手くネクタイを結べず泣き崩れてしまう、っていう場面が特に、印象的でした。虐殺が始まって、とにかく何とか、目の前のことをやってきたところで外の様子を自分の目で見ての、混乱して、切羽詰って、それでもしっかりしていないと、でも、っていう揺れ動く気持ちが凄く伝わってきて。

外国から来たカメラマンに、報道してくれれば世界はこんな惨いことをほうっておくはずがない、ありがとう、とポールさんが伝える場面がありました。
でもその時、カメラマンは、「世界の人々はこの映像を見て、怖いね、と言ってディナーを続ける」って返すんですね。
そう返されたポールさんの、なんとも言えない表情。

そして、そのカメラマンは、ルワンダの人々を残して国外に出られることになったとき、雨に濡れないように傘をさしかけられて、「やめてくれ、傘なんて恥ずかしい」と言いながらバスに乗る。外国人達を見送る、ホテルに残るしかないルワンダの人々。

この場面も、忘れられない場面です。それを恥だと思う気持ちに咄嗟に共感せざるをえない。
そういう恥を知ってる、と思うんですよね。自分の日常においても。
殺されるのを待つしかない、という彼らほどではないにしろ、苦しんでいる人や困っている人の為に何もすることが出来なくて立ち去るしかない、そういう時に、申し訳なさと同時に、そういう自分を恥だと感じるというか。彼はジャーナリストだから余計だったんでしょうね。無力なまま、彼らを置き去りにして自分だけ出ることを恥だと思う。

そういう恥る気持ちを、自分自身も忘れないでいたい、と思います。せめて。