食堂かたつむり 小川糸

ずっと気になっていた作品を、15日から16日にかけて読みました。

([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)

([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)

素朴な優しさを持っていて、料理を作ることが大好きな、そして同棲していた恋人にすべてを持ち去られ、声まで失ってしまった倫子という25歳の女性が始める食堂の物語です。
一日一組のお客さんだけをもてなす、決まったメニューのない食堂。
こんな風に、心を込めて作ってもらった料理を食べる、って最高の贅沢だな、と思います。

育てた豚を殺して食べることだとか、祈るようにして料理を作ること、そして何より食べるということ。
そういう事こそが、地に足がついている、ということなんだろうと改めて思いました。
まあ、この作品だけで言うなら、食堂で生計が成り立つのか、とか、倫子の環境だからこそ出来ることだよな、とか、色々とあるにはあるんですけどね(笑)
半分、ファンタジーに近いような気持ちで読めば、そこら辺はあまり気になりませんでした。

私は、きちんとした実感を持ちながら料理をしたり、食事をしたりすることが出来るように、やっぱりなりたいです。
そうしたら、地に足の着いた生活を送って、きちんと生きることが出来るような気がするんですよね。
それから、私、多分、美味しいものを味わう、ということが好きなんだろうと思います。多分。
無駄に舌が良いらしくて、ちょっと苦労しますけど(笑)

そんな感覚がある私にとっては、読んでいて幸せな気持ちになることが出来る作品でした。
それから、これはちょっとネタバレになってしまうかもしれないんですけど、手紙が凄く良かったです。
森絵都さんの「つきのふね」の最後の手紙のラストの二文も、思い出すだけで揺さぶられるような気持ちになるんですが、この手紙も、凄く良かったです。愛情に溢れていて、飾ってなくて。母と娘はやっぱり難しい。

今日、図書館に行ったときに、小川さんのエッセイを借りてきてみました。こちらも、読むのが楽しみです。