花の下にて春死なむ 北森鴻

お名前は知っていたけど読んだことは無かった作家さんでした。

花の下にて春死なむ (講談社文庫)

花の下にて春死なむ (講談社文庫)

気の利いたビアバー「香菜里屋」のマスターが、謎と人生の悲哀を解き明かす全六編の連作ミステリーで、第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作だそうです。

何々賞受賞作、っていうのは、この人なら他にもっと良いのがいくらでもあるんじゃ、っていう作品に与えられることもあるものですが、この作品に関しては、期待外れ、ということがなく、良かったです。「終の棲み家」が好きだったかな。

読みやすく、バーの雰囲気が良く、出されるビールとお料理が美味しそうで、良いアクセントになってるな、と感じました。それにしても、私はお料理を美味しそうに書いてある作品や作家さんに弱いのかもしれません。
憧れに近いものがあるというか。料理を楽しく作って美味しいと思いながら食べられるようになりたい、っていう気持ちがあるからこそ、こういう作品に惹かれているような気がします。日に三度あることを快いと思えれば、生活にだいぶ潤いが増す気がするんですよねー。

そうそう、最近、以前は全然分からなかったビールの美味しさが分かるようになって、味覚って変わるんだなあ、って驚きました。湯葉を美味しく感じたときにも思ったんですけど、自分で体験するとやっぱり少し不思議です。

一度、父が晩酌をする際に一杯だけもらう、ということをした日があったんですが、父は一緒に飲めるのが嬉しかったみたいで、喜んでくれたので、それからはずっと、タイミングが合えば一杯だけ付き合う、ということをしています。日によって、凄く美味しく感じる日とそうでない日があって、それもまた味わい深いですし、もう大人になってるんだな、いつまでも子供ではいられないな、と感じる時間になっています。

北森さんの他の作品も、機会があったら、また読んでみたいです。