銀二貫 高田郁

良い作品でした。

銀二貫

銀二貫

みをつくし料理帖シリーズ以外の高田さんの作品を読んだのは初めてだったのですが、やはり真っ直ぐで、食材への思いに溢れていて、江戸の時代も丁寧に描かれていて、オチも優しい綺麗さで、高田さんは素敵な作品を書かれる方だな、っていう思いを改めて抱きました。

高田さんの作品に出てくる人物は、若い人は真っ直ぐ成長していき、年を重ねている人は懐が深く、真っ当に生きている、という人が多く、読んでいると何だか安心できます。

こういう人物造形が嘘くさくならないですむのが、時代物の美点であり、自分が時代物を読むのが好きな理由の一つだなあと感じます。

今回は、地道に、一歩一歩と進み、かつ、その時その時での最善を尽くして生きていくしか道はない、ということも描かれていたように思います。その点でも、しみじみと沁みる、良い作品でした。

まあ、もっと早くそうしていれば良かったんじゃ、みたいなこともあるにはあったんですけど、それ以上に、終わりかたが、沢山の救いに溢れていて、それでいてきちんと大阪の商人らしさも描かれていて、とても好きでした。お金の使い方、っていうのはいつの時代も難しいものだと思いますが、こんなお金の使い方こそ、粋というのかもしれない、ということばかりで、最後まで読み終えると、「銀二貫」という題名に、なんだか涙が出そうな気持ちになりました。

今、ちらっと検索してみたら、この作品、この春からドラマになるんですね。高田さんの作品は、沢山の人に知られたら良いな、と感じるものばかりなので、嬉しいです。

ドラマでも、お料理が美味しそうに描かれますように!