火群のごとく  あさのあつこ

久しぶりにあさのさんの作品を読みました。
感想を書き損ねてしまっていたのですが、これも試験前だから、7月半ばに読んだのかな。

火群のごとく

火群のごとく

江戸時代を舞台にした、身分が違う少年達の物語です。あさのさんは現代を舞台にしたものも勿論良いですが、時代物に関しては、あさのさん自身が時代物がお好きで、楽しんで、愛情を込めて書いてらっしゃるんだろうな、っていうのが伝わってきて、こちらもじっくりと愛情を持って読みたくなります。

そして、時代物だろうと現代を舞台にしたものだろうと、あさのさん独特の文章の濃度の高さ、雰囲気の密度や湿度の高さは変わらなくて、その濃さが好きだな、と思います。
あさのさんだからこその少年達それぞれの生々しい感情、関わり方が印象深く、それだけにラストは辛くもありました。

この作品にも描かれた、少年期にしかないであろう、身の内に潜む衝動と荒々しさ、真っ直ぐさ、ひたむきさというものが眩しく感じられますが、こういうものは、男も女も関係なく、失わずにいる人は失わずに生きていく要素なのかな、と最近は思いもします。

それから、弥勒の月シリーズといい、バッテリーといい、この作品といい、あさのさんは兄と弟の関係性を奥深く描くことが上手い作家さんであるように思います。
私は一人っ子で、兄弟という関係にロマンを感じるタイプなので、そこも魅力的な作家さんです。

それにしても、剣道なあ。私はやっぱり、物が無いと戦えないものよりは、自分の肉体だけでそれなりに出来るほうが好きかな、って思います。あちこちに怪我はするんですけど、相手に痛い思いをさせる手ごたえがあると、自分は今、そういうことをやってるんだな、ってきちんと理解出来るし、咄嗟に手加減したり、相手を痛めつけ過ぎないようにしたりすることも出来るようになる気がして。剣道も上手い人は出来るんでしょうけど、自分はそこまで行け無さそうだもんなあ。素手のほうが、少しは、力の加減が出来るようになる希望を持てるような気がしています。