田村はまだか 朝倉かすみ

題名が面白い、そして吉川英治文学新人賞受賞作、かつ背表紙の筋書きが面白そうだった、ということで、ここに2、3日で読んでみました。

田村はまだか

田村はまだか

朝倉さんは初めて読む作家さんです。

うーん、本音を言ってしまうと、ちょっと期待しすぎたかな、という感じでした。深夜のバー、小学校のクラス会の三次会。彼らは田村を待っている・・・、と、簡単に言うとこういう話なんですが、六話連作の短編のうち、前半三つが良かっただけに、後半三つが力が弱いように感じてしまいました。

それから、人物を描くことの難しさ、特に魅力的な人物を描くことの難しさというものを改めて感じました。田村のエピソードも発言も、どこかで聞いたような感じのものばかりで、田村の魅力が分かりにくかったというか。作り物っぽさが強かったです、私にとっては。

ラストがなあ、引っ張った分、難しいよなあ、これは。

個人的には、特別収録の「おまえ、井上鏡子だろう」のほうがずっと良かったです。こちらは凄く良い短編だったように思います。まさに生活の中に埋もれる悲哀、という感じで。
特別収録作品のためにそれまでを読んだ、と思えば、それはそれでまあ良いか、と思えるくらいでした。

やっぱり、好みの作品に出会うのってありがたいことなんだろうなあ。それでも、あまり偏り過ぎず、こだわりすぎず、色々なタイプの作家さんの作品を読んでみたいな、って思います。