仮面の島 篠田真由美

このシリーズの作品をこちらのブログに書くのが初めて、ということに、さっき気が付いて、驚きました。そんなに読んでなかったのかあ。
文庫版を読みたくて、のんびり読んでいってるからなー。

この作品は「建築探偵桜井京介の事件簿」というシリーズの八作目になるんですが、ある意味、このシリーズは、私の原点、と言えるような気がします。一作目を読んだのは、確か、中学生だったんじゃないかな。

建築物が好きで、ミステリ(といっても、トリックを書くための登場人物、といった作品は好きではありませんが)が好き、流麗な文章が好き、そして、美しい人が好き(笑)という、自分の性質をより強化してくれたのが、このシリーズだと思います。

「玄い女神」「原罪の庭」「美貌の帳」は特に、建物も、登場人物も、謎も魅力的で、凄く好きです。

この「仮面の島」は、ヴェネツィアを舞台にした物語なんですが、篠田さんらしい、深い愛憎に絡められた人物達の物語になっていて、惹きこまれました。いつも感じるんですが、篠田さんの作品は、どこか、絵巻物のようです。あまりに美しい、というときがある。それでいて、それぞれが、強い感情のもとに動いていて、愛情や執着がしっかりと伝わってくるからこそ、惹きこまれるんですけど。

このシリーズは、登場人物達が年を重ねていくことになっているので、主要人物達の年の重ね方を読むのも楽しみなんですが、今作では、陰惨な過去を背負いながらも、主人公である京介に真っ直ぐに育てられた蒼という少年が、大きな決断をすることになり、そこも読みどころでした。

私は、普段、真っ直ぐで明るいタイプの登場人物にはそんなに惹かれないんですが、蒼の真っ直ぐさ、悩み方は凄く好ましいな、って感じるんですよねー。嫌だ、とかいう感情もきちんと持ってて、それと向き合える子だからなんだろうな。

久しぶりに篠田さんの作品を読めて良かったです!