海のある奈良に死す 有栖川有栖

海のある奈良に死す (角川文庫)

海のある奈良に死す (角川文庫)

これは完全に、題名に惹かれて手に取りました!だって、奈良だったんですもん!
これが私のファン心です!(笑)
有栖川さんの作品は、まだしばらく手に取るつもり、なかったんだけどなあ。
今は、色々な作家さんの作品に触れたいな、って思ってたんですが、まあ、これもご縁かな!って思います。

海のある奈良に死す、って響きからして好みだった、っていうのもあるし、有栖川さんならそんなに外れないだろう、と思ったのもあるんですけど。そして、さらっと数ページ読んだら、止まらなくなっちゃいました(笑)

「海のある奈良」と称される福井の古都、小浜を舞台にしたミステリ。奈良の東大寺で行われるお水取りや、そのお水取りに水を送るお水送りのことについても詳しく書かれていて、面白く読みました。お水送り、って全然知りませんでした。どちらの行事も、一度見てみたいなあ。

それから、人魚の肉を食べて、八百歳まで生きた女性がいたという、八百比丘尼の伝説というのが出てきて、あれ、これ知ってるな、何で読んだんだっけな、南総里見八犬伝、はるか昔に一応、ざっと読んだけど、内容はほとんど覚えてないから、八犬伝じゃないだろうし・・・、ってそこがもう、もどかしくなっちゃって、途中で自分の読書記録の旅に出たんですが、結局分からず、今もちょっともどかしいです(笑)

有栖川さんの初期の作品、ということで、まだぎこちなさや、トリックに関する、「いやいや、そんな一か八かみたいな・・・!」っていう甘さも感じなくもなかったんですが、色々と、土地の伝説や地理を活かしてあって、惹きこまれて読み進められました。それから、亡き作家の思いを汲み取ろうとしたアリスの気持ちが、ちゃんと果たされたようなラストには、有栖川さんの優しさを感じました。

それにしても、本当に、ビデオっていうものを昔に感じるようになったなー。
こうやってどんどん、時代が変わっていくんだな、ってしみじみと感じました。