快楽上等!3.11以降を生きる 上野千鶴子 湯山玲子

快楽上等!  3.11以降を生きる

快楽上等! 3.11以降を生きる

凄く刺激的で、読んでてしみじみと、もっと好奇心を持って、外に出て行かないと駄目だよなあ、って思える本でした。私には、未知のものに触れたい、驚きたい、という欲が全然足りない。もっと自分の枠を広げていかないといけない。というか、広げていきたい。

人にお薦めしたいか、と言われると迷う感じの、好き嫌いが分かれるだろう作品でしたが、この人達にしか出来ない対談だろうな!って強く思いました。

私は、社会学ってこういう感じのものだと思ってたんだけどなあ。去年一年間の社会学の講義は、正直、期待してた感じではありませんでした。大学、というか先生によって捉え方は様々なんだろうから仕方ないことですし、本筋を教えていただいたな、とは思うのですが・・・。飛び道具的な感じのものは、自分でやるべき、ってことかな。

先日、NHKの対談番組で、初めて、上野さんがお話されてるところを見て、もう、物凄く!!嬉しかったです。思ってたよりもずっと可愛らしい声をされてて、小柄で、でも目は鋭くて、エネルギーのある方なんだな、って感じました。上野さんは、私にとって、ちょっとしたアイドルみたいな感じの人なんですよね。私がどうしても嫌だ、受け入れたくない、と思っている根本的なところ、自分が女だからこその苦しさと、自分の性別に対する憎悪みたいなものを、学問、言葉というものを使って、明確にしてくださった方なので。

湯山玲子さんは、初めて知った方なんですが、好きなタイプの方でした。音楽家湯山昭さんの娘さん。

私は、自分自身、あまり倫理とか、常識というものを重視していないタイプで、倫理については特に、「え、何で?」って感じてしまうことが多いのですが、そんなところがあるからこその違和感やめんどくささ、噛み合わなさ、やりにくさ、っていうのを感じることがよくあるので、お二人の、スパッとした考え方が凄く心地良かったです。
このブログには、女であることが嫌、とかのキーワードでいらしてくださる方も結構いらっしゃるんですけど、そういう方には、一度、読んでみていただきたいです。上野さんのミソジニーに関する本のほうがよりお薦めですが、こちらも、面白く読める方には、面白く読めると思います。

以下は本当に、自分のためのメモです。

・子供を産む産まないに関係なく、次世代に対する責任はある。

・女の承認されたい、という欲求と、それに伴うロマンチックラブ幻想、それを「無理なことを求めてる」とさらっとおっしゃる上野さん。
『「たった一人のあなたに私を丸ごと全部受け止めてほしい」という自分の全面移譲は虫のいいことであって、あなたを全部受け止めてくれるのは神さまか麻原だけ。宗教しかない。』っていうのが今回は特に、「あー、上野さん好きだ!」って感じました。そこまでバッサリ言っちゃうか、とも思いましたが(笑)
自分に出来ない無茶なことを他人に求めるな、っていうのは、本当に、心に留めていきたいな、って思いました。

・「フェミニズムは、あんたを丸ごと抱き取るような思想じゃない」ってはっきりおっしゃってるとこも良い。そうですよね、人生そんなに甘くありませんよねー、って思えました(笑)それでも、本当にありがたいし、助けてもらったんですけどね。

・昭和という時代を美化していないのが流石。
坂東眞理子さんの言葉からの、戦争で多くを失った戦後の日本人は、国民全体が成り上がりだったから、豊かであるとはどういうものか知らなかった、という件は、「そうそう、そう感じてた!」って、言葉で読めてスッキリしました。私は、過去を美化する感覚や、昔は良かった(はず)、って思う感覚が薄いんですよね。今が良いから、ではなく、昔も(それこそ、古代も)凶悪事件は沢山起きてたし、人の醜い面も勿論あったし、絆、繋がりの素晴らしさと言いますが、それで迷惑を被ったり、苦しんだりした人だって山のようにいただろうに、それを忘れてしまいたいのか、見たくないのか、って思ってしまうからです。見てるのは過去じゃない、自分で、あるいは自分たちで作り上げたユートピアなんじゃないか、と思ってしまうことが多いんです。

・「目的がない、というのは遊びの絶対条件」っていうのには、「あー、そうかもしれない。そうか、それで私は『遊ぶのって楽しい』っていう感覚をなかなか持てないでいたのかな。」って、色々と考えました。遊ぶのって負担、って感じてたのは、目的が無い、っていう状態が苦手なタイプだったからなんだろうなあ。

村上春樹さんの作品を読んでると、何故かいつも男性主人公にイライラしてる気がする、何故だ、と思ってたんですが、それを明確に言葉にしてもらえて、「それだー!そこだ、そこ!」って、長年の自分の中での疑問が解決しました。スッキリした。この「スッキリする」っていう感覚が好きです。

・思考を停止させてしまわないこと、予測誤差を楽しみ、それに対応できるようになること、そして、もっと文化的、学問的教養を身に付けていくこと、がこれからの課題かな、と思いました。まあでも、やっぱり人間、最後は美意識なのかなー。

3.11以降、っていう題にはなってますが、ただただ深刻になってる気になって、どうする、どうする、って話をしてるだけではなく、それでいて、国や組織、原発について自分の考えをしっかり述べてある対談でした。

今度は、湯山さんの作品も、何か読んでみたいです。