かたみ歌 朱川湊人

かたみ歌 (新潮文庫)

かたみ歌 (新潮文庫)

今日は図書館に行くつもりだったんですが、ちょっと風邪気味なので、家でおとなしく、本を読んでました。

ちょっとスランプから抜け出せつつあるので、今日は新しい作家さんに挑戦しました。
朱川さんは、『花まんま』で直木賞を受賞されたときに知った作家さんです。

『かたみ歌』は不思議なことが起きる、昭和の東京の下町、アカシア商店街を舞台にした、ちょっと怪談めいた連作短編集です。

連作短編集として、とても上手い流れだったんですが、文庫本の裏表紙の「慎ましやかな人生を優しく包む 7つの奇蹟を描いた連作短編集」っていう表現には、ちょっと首を傾げたくなりました。

それぞれの奇蹟は、人生を優しく包んではいないような・・・。そして、登場人物たちは、別に、慎ましやかには生きていないような・・・。

色々とやりきれなかったし、ちょっと生きてる者に都合が良すぎたりした気もするんですが、それが「優しさ」と呼ばれるものなのかな、とも思います。人の死を扱っていながら、どこか寓話っぽく感じる作品で、昭和という時代を知らない私でも、何となく懐かしさを感じました。

この作品は、商店街のあちこちで、それぞれの人がそれぞれの人生を送っていた、という、ただそれだけのことが残れば、それで良いような気がします。

「紫陽花の頃」が、一番、印象的だったかな。ほんの束の間の生活。「夏の落とし文」のラストは切なかった。

キンキさんのファンとしては、吉田拓郎さんの話や、曲が何曲か出てきて、しかも、凄く良い、憧れるものとして描かれていて、何だか暖かい気持ちになりました。
改めて、凄い方と関わってこられてるんだなあ。