朱色の研究 有栖川有栖

久しぶりにミステリーを読みたくなって読んだんですけど、凄く好きでした。
有栖川さんの作品は何冊か読んだけど、これが一番好きだった。この人の文章が好きです。ミステリーなのに、ただの説明文になってなくて、鮮やかな色がある。

ミステリーを書く人って、本当にロマンチストなんだろうし、ロマンチストであるべきなんだと思う。

推理小説の魅力、殺人をテーマにする理由についての会話が凄く好きで、こういう根本的な考えや感性が好きだから、この人の作品が好きなんだろうな、って感じました。

死者は、こちらがいくら問いかけても絶対に答えることがない。答えてくれないと確信しながらなお問いかける、っていうのは切なく、人間的な行為。人は、答えてくれないと判っているものに必死で問い続ける。神に、運命に、時間に、そして死者に。相手は決して語らないのに、それでもまた問うてしまう。そんな人間の想いを推理小説は引き受けて、人が死に、謎は解け、真実が引きずり出される。

今作は、太陽信仰や浄土信仰も絡められていて、そこも面白かったです。
『黄金の岸打つ波の波音を聞きて立つらん人かげ一つ 佐佐木幸綱
っていう歌を初めて知って、好きだな、と思ったので、佐佐木幸綱について調べてみようと思います。

夕日は、没落の象徴だし、闇の前触れだけど、生まれ変わるために沈むものでもある。
確かにそうなのかもしれない。

それから、有栖川さんの作品を読むと、ウィットに富んだ会話、テンポの良い会話、楽しい会話をすることが出来る人になりたいなあ、って感じます。人間に一番必要な力ってこれな気がする。