花宵道中 宮木あや子

花宵道中

花宵道中

初めての作家さんだったんですけど、噂に違わず、物凄く上手かったです。江戸末期の新吉原の話。登場する遊女は、大体が中堅どころ。彼女達と、彼女達に関わった男たちの短編集。作品柄、結構そういう描写も多いんですけど、決して下品じゃないんですよね。文章も、くどくなく、それでいて味気ない訳じゃない。

遊女たちが、皆、ただの健気な、虐げられるだけの女だったり、逆に、特殊な環境の中でもたくましく恋に生きる女だったり、っていう風には描かれてなくて、一人一人が、密やかに息をする、生身の女性に感じられました。

だからこそ、彼女達の切なさや苦しさも迫ってくるし、貧しさのせいで売られ、買われた辛さに感情移入出来る。

各章の主人公たちの繋がりや関係性がまた、意外であったり、沁みたりして、工夫されていました。そして、それぞれの女性の選択には、何の優劣も無かったと思う。

色気はやっぱり、直接的なものよりも、雰囲気や、触れられそうで触れられない、っていうもどかしさから生まれるものなんだろうなあ。

これからも、機会が巡ってきたら読んでみたい作家さんです。