秘密の花園 三浦しをん

秘密の花園 (新潮文庫)

秘密の花園 (新潮文庫)

久しぶりに読み返しました。しをんさんの文章は、繊細で、慎重で、真摯だから大好きです。特に、女子校を舞台にしたこの小説は、ヒリヒリする切実さと暗さ、危うさ、美しさが詰まっていて、これからも読み返していくんだろうな、と思う小説のうちの一冊です。登場人物達とほぼ年齢が被ってるから、というのもあるんでしょうけど、どこを読んでも「わかる」と思う。
・・・好きすぎて何を書けばいいかわからないな。あまりに好きすぎると、多くを語らずにはいられないものと、何も語れなくなるものがありますが、この小説については何も語れなくなります。

一番好きな文章は、翠という少女が大切に思っている友人である、那由多という少女に対して思う場面。

『言葉をいくら重ねても、果てしなく隔てられ交わることがない。でもだからこそ、どこかに逃げたいとは思わないのだ。どこに行っても同じだ。どこに行っても一人なら、せめて那由多のそばにいたい。届かなかった言葉が虚無となっていくら押し寄せようと、それでもまだ言葉を重ねたいと思える相手のそばにいたい。』

そばにいる、ってこういうことだよなと思う。全てを分かり合うことは出来ないという諦めと切なさを飲み込んで、それでも分かり合うことを望むこと。私にも、まさにこんな風に思っている友人がいるので、なんだか泣きそうになります。

同性だからこその深い感情ってありますよね。決して恋愛感情ではないんだけど、だからこそ損得勘定抜きで付き合えて、あまり多くを望まずにいられる。相手の全てが信じられないくらい大切で、全てを受け入れて、愛すことが出来る。この本を読むといつも、彼女に会いたくなります。