サロメ後継 早瀬乱

サロメ後継

サロメ後継

ミステリだと思って読んでいた本が、ホラーだと気がついたときの辛さたるや・・・。

早瀬さん、『三年坂 火の夢』で江戸川乱歩賞とってたから、ミステリ作家さんなんだと思ってました。最初にとったのは日本ホラー小説大賞長編賞佳作だったとは・・・、なるほど、こんなこともあるんですね、勉強になりました。

サロメ後継』は完全に題名で選んだ作品でした。私は、サロメが題材になっているものは読まずにはいられないんです。サロメってなんでこんなに惹かれるんでしょうねえ、あまりに過激だからか、最期まで拒まれて成就しない恋愛だからか、禁忌に満ちているからか。まず、これを恋愛、っていって良いのかも微妙なところだとは思うんですけど。
この小説でのサロメの解釈は私とはかなり違ったので、面白かったです。

ヨハネサロメは交わることが出来ない。それどころか、簡単な意思疎通をすることさえ難しい。それくらい相容れない二人です。だから、真里亜と都築が共生できた時点で、そしてお互いを利用できた時点で、ヨハネサロメの関係になぞらえることは出来ない、って私は感じるんですけど。サロメを拒まないヨハネは、ヨハネじゃない。
ただ、『見ることは望むことだ』ていうのは、まさにその通りだと思う。見るのが先なのか、望むのが先なのか。

サロメに関するところ以外は、読むのがきつかったです。結構グロいし、リストカットをしている女性達を中心とした話だしで、精神的ダメージが大きかった。途中で読むのをやめようかな、とも思ったんですけど、なんとかラストに辿りつけました。美佐は、文博以外のものは何も望まない、という点では確かにサロメだと思う。だけど、文博は美佐を愛した時点でヨハネにはなれない。だから、サロメは後継されたけど、ヨハネは後継されない。じゃあ、力だけは持っているこの二人は、一体何になっていくんだろう。