きことわ  朝吹真理子

下の記事にお星様ありがとうございました!

きことわ

きことわ

なんか聞いたことあるな、この題名。なんだっけ?と思ったら去年の芥川賞受賞作だった。

疲れてるときに読むべきは芥川賞受賞作だろう、ってことで読みました。芥川賞ものらしく、そんなにエネルギーを使わずに読めたし、大きく感情を揺さぶられることはなかったけれど、淡々とした文章をひたすら読んでいくと、気持ちが落ち着きました。

『 永遠子は夢をみる。
  貴子は夢をみない。 』

という文から始まる、二人の女性が、昔一緒に過ごした別荘の整理をする話。

登場人物達は衝撃的な話をしたり、不思議な経験をしたりしてるんだけど、深入りしたり、考え込んだりせずになんとなく受け流してるから、読んでるほうもさらっと読み流しちゃう。そして、読み終わって何が残ったか、って言われるといくつかの夢の断片と、子供の肌の熱さと、『こうしているうちに百年と経つ』っていうフレーズだけ。
この残らなさが、純文学作品の魅力です、私にとっては。劇薬にはなりようがないから、安心して読める。

ただ、「つめたい」とか「えらびとる」とかの、普段漢字まじりでしか見ない単語をひらがなで書かれるのは苦手なので、そこはちょっと辛かった。ちょいちょい、ひらがな単語が出てきたんで。これも雰囲気を整えるための技術の一つなんだろうけど、ちょっとした違和感の積み重なりが引っ掛かりました。