小夜しぐれ みをつくし料理帖 高田郁

1回本を読む周期に入ると、ずっと何かしら読んでいたくなって困るな。書きたいことがたくさんあるんだけど。文庫本1冊読むとなると、2時間くらいかかっちゃうんだよなー・・・。時間を上手く使えるようになりたいです。

小夜しぐれ (みをつくし料理帖)

小夜しぐれ (みをつくし料理帖)

今日読んだのは、『みをつくし料理帖』というシリーズの第五巻。
江戸時代を舞台にした、澪という名の若い、才能のある女料理人の物語です。
この澪ちゃんが嫌味のない良い子で、このシリーズを読むと、必ず「澪ちゃんって子は本当にもう・・・。こんなにいい子が幸せにならなかったら嘘だよ・・・!(涙)」っていうテンションになっちゃいます(笑)

高田さんが元は漫画原作者だったというだけあって、「待て、次号!」みたいな引っ張り方が凄く上手いし、キャラクターも話もわかりやすいし、江戸時代に関するマニアックな知識が無くてもスラスラ読めるので、あまり本を読まない人にも進めやすいシリーズです。

こんなに毒のない、主要人物がもれなく「良い人」な話は時代物ならでは、な気がします。勿論、皆それぞれの事情を抱えてるけど、前を向いて精一杯生きている。その姿にハッとさせられます。「そうか、生きるってことは一日一日を懸命に積み上げていくことなんだよなあ。生きてる限りは何があっても、食べて、寝て、朝を迎えるしかないんだよなあ。」っていう当たり前の事を思い出すというか。

私にとって、何よりありがたいのは、このシリーズを読むと「料理をすること、食べることって、こんなに楽しいことなんだ。」って感じられることです。文章自体が凄く上手い訳じゃないけど、料理の描写、食べ物の描写は物凄く良い。
私は正直、物を食べる事自体が好きじゃないし、和食も苦手です。大豆食品が苦手なので、味噌や豆腐を食べることがまず辛い。白米も好きじゃない。食べられはするし、どんな食べ物でも、残すことはほとんどしないんですけど、美味しいとはあまり感じない。母親が料理が下手だとかそういうことは全然無いので、どうしてこうなっちゃったのか不思議です。生まれつき食べるのが嫌いな人っているのかな?自分ではそれに近い感覚なんですけど。

食べることが好きじゃないので、料理もあんまり好きじゃありません。手を動かすのは楽しいけれど、喜びはあまり無い。だけど、澪ちゃんは本当に料理が好きで、食材を慈しみながら料理をするんですね。私にとっては、澪ちゃんの料理へのこだわりや、旬のものを旬のうちにきちんと料理することで、季節の移り変わりを愛でる姿勢、っていうのが本当に新鮮で眩しいし、澪ちゃんが作る、暖かい気持ちに満ちたこの料理を食べてみたいな、って自然に思える。

私の食に関する感覚が物凄く鈍いだけで、本来は食べる事や料理をする事って、こんなに喜びに満ちたものなんだ、って気が付きます。香りや温度、色や食感、素材の組み合わせで生まれる新しい風味。感覚を研ぎ澄ませば、その一品を愛でる要素は尽きないのに、私は食事をするときに、ちゃんとその料理を味わおうとしてなかったんだと思います。これからは、料理をするときも食事をするときも、食材を味わう気持ちを忘れないようにしよう・・・ってこのシリーズを読むたびに思いはするんですけど、しばらくすると忘れちゃう。忘れた頃に次の巻を読む。そして、また思い出す。これを繰り返しているうちに、食事を心底楽しめるようになったらいいなあ。