昨日、今日と一泊で、父のお友達に会いに、佐賀の唐津に行ってきました。

国指定重要文化財である、旧高取邸に案内していただいたんですけど、久しぶりに素敵な建物に出会えて、本当に嬉しかったです。大きな、古いお宅なんですけど、平成十年まではちゃんと人が住んでた、っていうから凄い。確かに、まだ微かに人の温度、というか生活感が残ってるように感じました。

凄くお金をかけてあるけど、品がある、っていう珍しい建物で、高取さんのお人柄が出てるんだろうなあ、って思います。住むところには人が出るって言いますもんね。

それから、国内で唯一、座敷に仕組まれた能舞台が現存しているんですけど、音の反響から何から考えつくされていて感動しましたし、普段は生活空間であるところが、年に一度、お能の舞台として整えられる、ってとても贅沢で、そういう類の贅沢を楽しむ余裕があるのは、かっこいいなって思いました。

そして、これが私にとって一番の感動ポイントだったんですけど、旧高取邸は、和洋折衷ものだったんです!洋間も面白かったんですけど、茶室のランプが西洋風の物であったり、ところどころにイタリアから取り寄せたというタイルが使われていたりと、ワンポイント、上品に西洋を取り入れてあるのが素敵で、この近くに住んでいたら月に一度は通ったのに!ってちょっと悔しくなりました(笑)

それから、夜は父と二人で旅館に泊まったんですけど、父と二人っきりで、何の音もない中で過ごすことってなかなか無いので、新鮮でした。といっても、父は仕事で前日に一睡も出来なかったこともあって、すぐに酔ってしまったんですけどね。

折角だから、これまでのことやこれからのこと、楽しい話を沢山しようと思っていたのに、父が明らかに酔っているのがわかると、ふと謝りたくなってしまって驚きました。そして、そのまま、考えるより先に「こんな娘でごめんね。貧乏くじを引かせてしまった、って本当に申し訳なく思ってる。ごめんね。」って言ってしまった自分にまた驚いて。最近は全然頭に浮かんでいなかったし、そう何度も思ってはいても、一度も口に出したことが無かった言葉だったので、言ってしまったことがショックでした。

なんだろうなー、父は、口にはしないけど、私のことを大事に思ってくれてるのはちゃんとわかるんです、今は。だけど、父は本当は私みたいなタイプの人間があまり好きじゃない、っていうのもわかるんです。自分の娘だから大事にしてくれるんであって、もし血が繋がってなかったら、私のこと好きじゃなかっただろうなー、って思う。そして、だからこそ申し訳ないんですよね。父が、なんの無理もなく一から十まで愛すことが出来る娘になってあげたかったのになー、って。私は、父みたいな人にとっては、本当に理解できない、育てにくい娘だったと思います。それなのに、私を見捨てず、受け入れてくれたことに心から感謝しています。
でも、だからといって、私が父の理想とは違うタイプの娘だったことについて謝るのは嫌でした。父は、私にこういう謝られ方をしたら、「そんなことない。」って言わないといけなくなる。それを私は知ってる。だったら、口に出す時点で甘えてるんですよね。謝ってるんじゃなくて、許してもらおうとしてる。それは駄目だな、って思ってました。

でも、昨日、本当にポロっと言っちゃって。父は酔いがまわってたので、ちゃんとした反応は返ってこなかったし、今日聞いてみると、そのだいぶ前からの記憶が飛んでると言っていたので、謝ってしまったこと自体が、無かったことになってくれはしたんですけど。
あーあ、こういう所では自分を律することが出来るタイプだと思ってたんだけどなあ。人に許してもらおうなんて甘えるんじゃなくて、苦労させてしまったという事実を、自分だけでちゃんと抱えていかなきゃいけないのに。

そんなこともあってちょっと落ち込みましたけど、やっぱり旅は良いなあ、って思います。今回は、父が早く寝てしまったこともあって、夜はほぼ一人で過ごしたんですけど、普段はゆっくり考えられなかったり、考えようとしなかったりすることを、じっくり考えられました。やっぱり、日常から離れるからなのかなあ。自分自身のことを考える機会、って意外と少ないですから、時には一人旅をして、ゆっくりと自分のコンプレックスや考え方、好きなこと、これからのこと、なんかをぼんやりと考える時間を持つことも大事なんだな、って感じました。考えを整理して、自分の言葉で書く、っていうただそれだけのことで、びっくりするくらいに色々なことがクリアになるんだな、って。